校長講話

校長講話

令和五年度入学式

 桜の木も花から新緑へと装いを変え、まさに若い命が躍動する季節がめぐってまいりました。春本番を迎えたこの佳き日に、ご来賓様、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、かくも盛大に令和五年度埼玉県立庄和高等学校入学式を挙行できますことは、本校関係者一同の大きな喜びでございます。ご臨席をいただきました皆様に、厚く御礼申し上げます。

 

ただいま入学を許可しました163名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんは、今日から庄和高校の第四十四期生です。在校生、教職員を代表して、皆さんの入学を心より歓迎いたします。

保護者の皆様にも、今日の日を迎えられたことに心よりお慶びを申し上げます。

 

本校は旧庄和町唯一の県立高校として、昭和五十五年に開校いたしました。以来、生徒の個性を伸ばし、質の高い多様な進路実現を目指す学校として、地元の皆様に愛され信頼される学校へと成長を遂げてまいりました。この式に臨まれている新入生の皆さんには、ぜひ本校に明るく活気ある新風を吹き込んでいただき、本校の歴史と伝統に新たな一ページを築いてもらえることを期待します。

 

 三年前、新型コロナウイルス・パンデミックという、過去百年に人類が直面したことのない緊急事態がおこりました。皆さんの中学校での生活も、その影響を大きく受け、三年間を通じて様々な制約の中での中学校生活を余儀なくされたことと思います。幸い、パンデミックによる学校生活への制約は、徐々に解除されつつあります。これから始まる本校での三年間の高校生活では、ぜひとも仲間とともに様々なことに思い切りチャレンジし、そして互いに切磋琢磨して、皆さんの人生にとってのかけがえのない高校生活を存分に楽しんでもらえればと思います。

 

ところで、そもそも高校生は高校生活をどのように過ごすべきなのでしょう。高校を卒業すれば、事実上社会人とみなされます。とすると、社会の一員として自分で何とかやっていける最低限のスキルは身に付けておかなければなりません。ただ、今は大変便利は世の中です。皆さんの中にはこれまで、自分で考えて何とかしなければならなかった経験が、あまりない人もいるかもしれません。周りに何でも面倒を見てもらえたので、自分から判断、行動しなくても、自分で考えなくても、言われたとおりにしていれば何とかしてもらえたし、何とかなったのでしょう。でも、ひとたび社会に出れば、じっとしていては誰も面倒など見てはくれません。助けてもくれません。何をやればいいのかも、どうやるのかも、悩みやわからないことへの対処法も、自分から動かなければ解決しません。つまり、自分の頭で考えて、適切に判断し行動しようとする。自分で何とかやっていこうとする。そのことが、大人になれば当たり前のこととして求められるようになります。ということは、これから始まる高校生活で、そのために必要なスキルを磨かなければなりません。

 

 物事を正しく判断するためには、考えを深めていくことができなければなりません。それを可能にするには、語彙力と幅広い基礎的な知識が必要です。ただ、知識や思考力の獲得には、忍耐力や意欲といった目標の達成に関わるスキルがものをいいます。あわせて、ヒトは社会的な生き物ですから、様々な関わりの中で正しく判断し行動するには、協調性や共感性といった他者との協働に関わるスキルが必要不可欠です。豊かな心をもって人生を切り拓いていくには、自尊心や自信といった情動の制御に関わるスキルも欠かせません。これらは「非認知的スキル」といわれるもので、数値等で測れるものではありませんが、身に付けておくべき非常に大切なスキルです。

 

 皆さんは、生涯にわたって人生という長い階段を、一歩一歩高みを目指して上っていくことになります。ただその階段も、土台がしっかりしていなければ、何かのはずみで倒れてしまいます。階段を支える土台とは、自分の頭で考え、適切に判断して行動しようとしたり、自分で何とかやっていこうとするうえで必要な基本ともいえる部分です。その土台をつくり上げる時期が、まさにこれからの時期なのです。ですから、勉強はもちろんですが、それ以外の興味や関心のある様々なことに、本気でチャレンジするべきです。目先のことばかりではなく、これからの長い人生を見据えて、高校生の時期に見ておきたいもの、経験しておきたいもの、身に付けておきたいものにチャレンジすべきです。チャレンジすれば、失敗することや挫折することもあるかもしれませんが、それも貴重な経験です。それらがすべて、皆さんのこれからの人生を豊かにするうえでの土台になるはずです。

 

 庄和高校では、皆さんに様々なことにチャレンジして、しっかりした土台をつくってもらうための環境を整えています。皆さんにはせっかくあるその環境を存分に使いこなして、高校生活を満喫してもらいたいと思います。

 

今日は、そのためのコツを伝授します。

 

 一つは、規則正しい生活を送るためのタイムマネジメントです。何をするにも、日々の生活が安定していなければ、からだも心もついていきません。やりたいこと、やるべきことがいろいろある、あるいはやりたいことを早く見つけたいはずの皆さんは、時間を自分で管理するという意識を強く持たなければなりません。はじめは難しいと思うかもしれません。でも、やりながら自分なりの時間管理法を見つけ出してみてください。

 

 二つ目は高校生活では仲間とともに学び、切磋琢磨すること。高校という場は、そこで出会った仲間たちと遊び、教え合い、議論し、励まし合い、助け合い、そして仲間と一緒になって何かをつくりあげたり、何かを解決したりすることができる貴重な場です。そうした生活が、皆さんを必ずや成長させてくれます。

 

 三つ目はやると決めたら全力で取り組むことです。勉強はもちろん、学校行事も、部活動も、趣味も遊びも、やるなら本気でチャレンジすべきです。高校という場では、一人では困難に思えるものが、仲間と一緒にチャレンジすることでできてしまったりします。くじけそうなときも、仲間がいれば何とかなってしまう。そんな得難い場でもあるのです。

 

少々難しい話のように聞こえたかもしれません。でも、決してそんなことはありませんし、心配することもありません。皆さんには、人生で一度限りの高校生活に臨むにあたり、この庄和高校で素直に自分を成長させたいという気持ちを持ち続け、そして仲間とともに本気でチャレンジする気持ちを忘れることなく取り組むことを決意してほしい、ということです。本当の意味で何かを楽しむには、真剣に本気で全力で、ことに挑まなければなりません。皆さんの高校生活を、本校の教職員が全力でサポートします。どうぞ、仲間とともにこれからの高校生活を思い切り楽しんでください。

 

最後になりますが、保護者の皆様におかれましては、重ねてお子様の入学のお慶びを申し上げます。本日より、大切なお子様をお預かりいたします。私たち教職員は、お子様方がそれぞれの力をしっかり伸ばし、三年後には心身ともに大きく成長した姿で庄和高校を巣立ってくれるよう、全力でサポートしてまいります。ぜひ、本校の教育力を信頼していただくとともに、家庭と学校とでお子様の成長に向けて、歩調を合わせて取り組んでいけたらと思っております。何卒、ご支援とご協力をお願いいたします。

 

結びに、ご来賓様、並びにご列席の皆様の益々のご健勝、ご発展をご祈念申し上げるとともに、今後とも変わらぬご指導とご鞭撻をお願い申し上げ、私の式辞といたします。

 

令和五年四月十日

埼玉県立庄和高等学校長 水石 明彦

0

第一学期始業式

先月おこなわれたWBCでは、侍ジャパンの活躍が日本中を熱狂の渦に巻き込みました。この先も、夏の水泳やバスケットボールの世界選手権、秋のラグビーのワールドカップなどが予定されています。これまでの数々の制約もやっと解除されてきていますので、今年は明るく元気が出る話題をたくさん期待したいものです。

 

皆さんにとっての高校生活も、残すところ一年ないしは二年です。高校時代にやっておきたいこと、やっておくべきことに、ぜひとも全力投球してください。

 

さて、令和5年度が始まりました。今日の午後には、皆さんの後輩が入学してきます。ぜひ、庄和高校の先輩としてのたくましい姿を、後輩たちに見せてあげてください。

 

 今日は、皆さんが高校を卒業したときになっていてほしい姿についてお話しします。結論を先に言ってしまうと、「まだまだ分からないことはいろいろあるにせよ、この先自分で何とかやっていこうと思える」。そんな姿です。

 

補足をします。今はとにかく便利というか、便利すぎる世の中です。そんな中で生活していれば、周りの人の言うとおりにしていれば何とかなるとか、何もしなくても何とかしてもらえる、なんていう意識を、どこかに持ってしまっても無理ないのかもしれません。

 

また、今の世の中全体の意識というか空気感が、リスク回避、安全志向にグッと傾いてきています。無理などせずに、なるべく楽をしていい結果を得たい。身近な、あるいはごく近い将来の結果を求めて、最短距離で効率よく目指すのが正しい。そんな現代的な思想や態度も感じられます。

 

でも、皆さんが高校を卒業して、一たび社会の一員として世の中に出ていけば、一人前の大人として扱われます。自分で何とかやっていかないと、誰も面倒など見てはくれません。ですから、その準備を高校時代にしっかり積んでおく必要が高校生にはあります。また、人の人生は長いのですから、目先ばかり見ていてはいけません。20年後、30年後に社会で力を発揮するには、高校時代にやっておくべきことがきっとあるはずです。

 

では、具体的にはどうすればいいのか。端的に言えば、興味のあることややらなければいけないと思っていることに、本気でチャレンジする経験を積むことです。

 

ありきたりでピンとこないかもしれないので、部活動を例にとります。あえて本校にはない部活にして、高校でラグビー部に入ったとします。まったくの初心者がまず何をするかといえば、基本スキルの習得です。入って数か月もすれば、ゲーム形式の練習にも参加できるでしょうし、一年もしないで大会にも出場できるかもしれない。でも、基本スキルの習得には時間と労力がかかるものですから、そこは手を抜くことなく3年間磨き続けなければなりません。例えば、パスにも様々なパスがありますし、左右どちらへも自在にパスできなければなりません。キックだって様々な蹴り方があるし、利き足だけでなく両足どちらでも正確に蹴れるようになりたいものです。筋力、脚力、持久力のアップももちろん必須です。

 

このとき大事なのは、ただ言われたとおりにやるのでなく、どうすればもっとうまくなるかを、自分で考えたり、調べたりしながら様々なことを試してみたり、工夫をしてみたり、密かに自主練習をしたり、といった姿勢と取り組みです。本来、できるようになりたい、うまくなりたいという気持ちがあれば、自然とそうした気になるものです。人は誰でもその気にさえなれば、そうやって頑張れます。本気でチャレンジすることが大切だと言ったのは、そういうことです。

 

高校ではそれなりに活躍できても、基本スキルの習得をおろそかにしてしまった選手には、その後の成長は期待できません。一方で、高校ではあまり目立たなかったとしても、手を抜かずにやり続けた選手には、一流への道が拓けるかもしれません。

 

10歳代後半というのは、その人の人生の土台をつくる時期です。つまり、これからの長い人生で必要となる基本の習得にまい進する時期です。それを、高校生は仲間とともに取り組めます。一人ではくじけてしまいそうなときも、仲間がいれば助けてもらえるし、頑張れたりもするものです。

 

そして、この基本の習得を目指して取り組んだ経験と自負が、自分で何とかやっていけると思える根拠になる。そんな風に思うのですがいかがでしょうか。

 

人は、若いうちにたくさんのチャレンジをする中で、様々な経験をしながら育つものです。たくさんのチャレンジをすれば、悩みや苦しみ、挫折も経験しますが、それでもチャレンジを続けるからこそ、人は高みに上れるし、偉大な成果もあげられる。つまり、チャレンジしたその経験こそが、皆さんを立派な大人にするのだと思います。

 

というわけで、「チャレンジ」。この精神をいつも心に秘め、本校在学中にいろいろなことに本気でチャレンジしてくれることを期待しています。

0