校長講話

【校長講話】三学期始業式

三学期が始まりました。今年度もあと少し、三つの学年揃っての始業式は、今日が最後になります。この三学期というのは、今の学年を締めくくる仕上げの時期であるとともに、4月からの新たな環境への準備の時期という意味合いもあります。そこで今日は、三学期さらにはその先を見据えて、ある人物の言葉を紹介します。

 

その前に、まずは阪急電車の話から始めてみます。阪急電車といえば、神戸三宮と大阪梅田、そして京都四条、さらには宝塚などを結ぶ鉄道会社ですが、そのものずばり「阪急電車」というタイトルの小説があります。この小説は、宝塚駅と西宮北口駅間を15分ほどで結ぶ阪急今津線の車内やホーム、その沿線で繰り広げられる数々のエピソードで構成されています。2011年には映画にもなりましたので、見たことのある人もいるのではないかと思います。中谷美紀さんや戸田恵梨香さん、有村架純さん、子役時代の芦田茉奈さん、さらには宮本信子さんといった俳優さんたちによって、沿線でのエピソードが綴られています。

 

その阪急電車ですが、20世紀の初めに鉄道開設が計画された段階では、まだまだ沿線には住民が少なく、利用者が見込めるような状況ではなかったそうです。でも、そこから先を見据えた様々なアイデアを駆使して、数々の事業を実現させていくことで利用者を獲得し、後に小説や映画にまでなるような素敵で活気ある鉄道路線へとなっていきます。そのときの利用者獲得のアイデアが、独創的かつ画期的な凄いものでした。たとえば、鉄道沿線の住宅開発を鉄道開設と同時に進めることで乗客を増やし、郊外の住宅から電車で通勤するというライフスタイルを世の中に定着させていきます。また、郊外にある宝塚に宝塚歌劇団をつくり、都心部にある梅田には世界初の駅直結のターミナルデパート阪急百貨店をつくります。それらによって、沿線の住民が通勤での利用客としてだけでなく、買い物やレジャー目的の利用客としても阪急電車を利用するというスタイルをつくってしまいます。つまり、今から100年も前に、後に他の私鉄がこぞって真似するような私鉄経営のビジネスモデルを創り、同時に今に繋がる日本人のライフスタイルまでも創ってしまったわけです。そんな画期的なアイデアで、阪急電車を一流の鉄道会社へと成長させていった凄い人物が、創業者の小林一三という人です。

 

その小林一三が語ったとされる言葉を、今日は紹介します。

 

「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら誰も君を下足番にしておかぬ。」

 

昔は客のはきものを出し入れする下足番という仕事があったそうですが、誰もが望んでやりたい仕事とはいえないものだったのでしょう。そんな仕事でも、与えられた仕事にベストを尽くしていれば、平凡なことでも完璧にやり遂げていれば、そのうち信頼されるようになって周りが放っておかなくなる。そんな意味でしょう。

 

関連して、これから社会に出ていく学生たちへはこうアドバイスしたそうです。

 

「必要な人になることが肝要で、どっちでもいいと云ふ人間になっては駄目だ。」

 

社会では第一段階の「便利な人」、第二段階の「必要な人」、第三段階の「特色ある人」とステップアップしていくと小林一三は考えていたようで、まずは第二段階の「必要な人」になることが重要だと説いたわけです。ここで言う「便利な人」とは、常識的で誠実に仕事をする人のことで、こういう人がいてこそ会社はまわっていくのだが、良く言えば真面目でも、悪く言えば平凡な人である。それに対して「必要な人」とは、自分の持つスキルや知識を周囲の人たちに役立ててもらえる人で、その分野のことならこの人に聞けばわかると言われるような人である。まずは、そのような人になりなさいとアドバイスしたわけです。

 

一つの仕事にベストを尽くす。そうして、その道のエキスパートになる。ある一つのことに対してその人でなければならない人間になる。そうすれば、周りがあなたを認め、信頼するようになる。周りがあなたを放っておかなくなる。そうアドバイスしているのだと思います。

 

この三学期、さらには4月からの新年度で、やるべきこと、与えられた仕事、やると決めたことに、とにかく全力を尽くし、完璧にやり遂げてみせる。その心意気を持って、日々の生活に臨んでみてもらえればと思います。