校長講話

【校長講話】二学期始業式

この夏は、パリ・オリンピックに熱狂した人も多かったのではないでしょうか。日本選手も大活躍でした。普段目にする機会の少ない競技にもスポットが当たり、それぞれの競技の凄さ、面白さ、そしてスポーツのすばらしさを存分に味わうことができて、しかも4年に一度しか開催されない。それがオリンピックです。皆さんそれぞれに記憶に残る名場面が数々あったと思いますが、個人的には、男子棒高跳び決勝でのデュプランティス選手の世界新記録更新となる6m25cmの大跳躍と、男子バスケットボール決勝の第4クォーター残り3分を切ってからのステファン・カリー選手の4連続3ポイント・ショットには、心底驚嘆しました。

今はまた、パリ・パラリンピックに熱い視線と声援を送っていることと思いますが、そんな熱い毎日の中、今日から2学期がスタートします。

 

今日は、コミュニケーションについて話をしてみます。6月に放送されたNHK Eテレの「スイッチインタビュー」という番組に、女優の上白石萌音さんが登場していました。言語学に興味があるいう上白石さんの希望で、言語学者で慶應義塾大学教授の川原繁人さんとの対談が実現したそうで、とても興味深い会話が展開されていました。例えば、こんな感じのやり取りがありました。

 

 

○ 生活していると、気持ちが言葉を追い越すことがある。「あーっ!」とか、本当に体が先に動くし、その延長線上に歌と踊りがあるような気がする。しゃべるときより歌うときの方が息が多いが、その息で伝えられることはすごくたくさんあると思う。「苦しくて吸う息」と「うれしくて吸う息」では音としても違うし、そういうものを聞いたときにドキッとする。

 

● 私のあまり好きじゃない言葉に、「語彙力足りない」というのがある。感動したときに「やばい!」というのを、「それは語彙力足りない」と批判する人もいるが、冷静に「これこれこういうことで、こういうふうになってこう感動しました」と言語化する前の、あの感情を否定するのもどうかと思う。

 

○ 「やばい!」ってすごく面白い言葉で、あれほど正確に感情を伝えられる言葉もないかもしれない。『千と千尋』のクリエイティブチームの外国人の方に、「なんか面白い日本語ない?」と言われて、「“やばい!”って便利な言葉がある」、「いつでも気持ちさえ乗せれば伝わるよ!」と教えた。小さい子どもは持っている言葉はすごく少ないが、びっくりする感情表現をする。大人になるとそこが不自由になってしまう。だから言葉にできない気持ちもすごく尊いし、それを何とか言葉にしようとするのも、すごく素敵なことだと思う。

 

● 伸ばすべきは語彙力じゃなくて、表現力。

 

○ 表現力と感性。感じる気持ち。

 

● 読み取る力。だから息遣いだけからもいろんなことが読み取れるし、息遣いだけでも伝えられることがある。

 

 

コロナ禍の影響は極めて大きいとはいえ、最近は対面でコミュニケーションをとる場面が減ってきてしまっています。その逆に、SNSを中心に文字での情報発信の占める割合が高くなっている。

 

でも、上白石さんと川原さんの対談にあるように、相手に気持ちを伝える、相手の気持ちを感じるというコミュニケーションは、本来は言葉そのものだけではなくて、息遣いや声の強弱、身振りや手振りといったちょっとしたしぐさ、目線や表情など、全身での様々な表現を使ってなされるものです。互いの意思疎通が十分に図られないと、健全で良好な関係はつくれないし維持できませんから、このことは人間にとっては根源的に大切なことです。その意味で、相手に気持ちを伝えられるだけの表現力や感性、相手の気持ちをしっかり感じ取ることのできる力、読み取る力はものすごく重要で、将来にわたって磨き続けていかなければならないというのは、まさにその通りだと思います。

 

ただ、わかると思いますが、今挙げたようなことは、対面だからこそ感じたりわかったりできる要素がたくさん含まれています。それだけ、対面でのコミュニケーションが重要だということです。ですから、対面での機会をぜひ大切にしてみてほしいし、SNS等で文字だけで情報を発信するときには、文字だけで伝えたい気持ちが誤解されずにちゃんと伝わるかどうかに、十分気を付けて発信する必要があるということも、改めて認識しておいてもらえればと思います。

 

コミュニケーションにおいて、相手に気持ちを伝える、相手の気持ちを感じるという意識なくしては、良好な人間関係など成立し得ません。そのことを改めて再確認してもらいたいと思い、今日は上白石さんと川原さんの対談を話題にしてみました。幸い皆さんは今高校生です。日々常に様々な仲間とともに高校生活を過ごしています。対面でのコミュニケーションスキルを磨くには、まさに申し分のない環境です。この貴重な環境をもっと積極的に活用して、この庄和高校での生活をより充実させてみてください。

 

気温や湿度が高いなかでの活動は、思った以上に体力を奪うし、疲労を蓄積させることになります。若さを過信することなく、引き続き体調管理には十分留意してください。